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ドイツ軍戦車「ティーガーI」の乗員の生存率が高かった理由

無敵重戦車ティーガーI戦記 第3回

第二次大戦期に「戦車大国ドイツ」で生まれた、ティーガーI。敵戦車を噛み砕く「戦場の猛虎」の誕生と活躍を描く連載、第3回。 
ドイツ陸軍兵器局はヘンシェル社に対し「30tの試作1号車」という意味のVK(全装軌式車両の略号)3001(H)を発注。ポルシェ社との競合試作として開発され、結果、ヘンシェル社の方が選ばれ、ティーガーIとなった――。

避弾経始が考慮されていないティーガーIは外観こそ武骨ながら強力無比な重戦車で、当時最強の誉れも高く乗員の信頼も厚かった。1349両(試作車含む)が生産されている。

強力無比な砲、そしてぶ厚い装甲で守られた「猛虎」

 かくしてティーガーIは誕生した。本車はそれまでのドイツ製戦車のデザインを踏襲しており、IV号戦車に類似する外観を呈している。本来は海軍で用いられていた傾斜を付けた装甲板に敵の徹甲弾を命中させ、見かけ上の装甲厚をかせぐと同時に敵弾を滑らせて弾くという、ソ連のT34や本車よりもややあとから開発が始まったパンター中戦車に用いられている、避弾経始の考え方はまったく採り入れられていない。

 その代わり、分厚い装甲で敵弾を弾くという発想で設計されており、車体前面100mm、同側面~後面80mm、砲塔正面の防盾部約120mm、同側面から後面にかけて80mmという重装甲を誇った。そして、敵に対して真正面で正対せず斜めに向き合うことで、装甲板に左右どちらかの傾斜を設けて避弾経始と同様の効果を得ることが行われた。

 ティーガーIの運用マニュアルでは、この斜めに構える角度を時計の文字盤に擬えて、正面を12時、その正反対の真後ろを18時とした場合、10時半、14時半、16時半、19時半の4つの方向となるので、それぞれを「朝食」「昼食」「コーヒータイム」「夕食」に見立てて、本車の乗員たちはこれを「食事時間の方向」として憶えた。

 
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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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